水泳

スイムが苦手なトライアスリートへ。クロール上達のコツとおすすめアイテム

練習をやっているけど水泳で伸び悩んでいるトライアスリートは少なくはありません。

しかし、オリンピックの競泳選手育成に尽力した筑波大名誉教授野村武男さんは次のように言っています。

「どんなカナヅチでも、大人になってから水泳を始めた人でも、人間は正しいやり方で練習しさえすれば、必ず1500mを20分まではもっていけます。これは今までの研究データからいって、自信をもって断言できることなんですよ」

引用、「トライアスロンJAPAN」より

トライアスリートにとってクロールが上達するためにはどのように考え練習していけばいいのか?

そして、トレーニングを楽しむためのおすすめのアイテムを紹介していきます。

トライアスリートにとって水泳で重要なこと

ポイントは

・キックはあまり重視しなくてもよい

・上達のために重視すべきポイントはローリングとハイエルボー、この2つだけ

・重要な事は「正しい方法で練習する」

なぜキックを重視しなくてもよいのか?

水泳でディスタンス系のレースの場合、キックを多く行う事は、疲労に繋がり長時間は耐えられません。
それは脚の筋肉の質量は腕の4倍近くあり、エネルギーを多く使うからです。

水泳に必要なエネルギーは大きく分けると、推進力に使うエネルギーと浮力のために使うエネルギーになります。

筑波大名誉教授野村武男さんは次のように言っています。

「プルは推進力に大きく貢献するけれど、キックはほとんど浮力確保だけに使われています。推進力にできないわけではないけれど、それがうまくできるのは競泳選手の中でも、相当キックがうまい選手に限られます」

引用、「トライアスロンJAPAN」

トライアスロンの場合、海では浮きやすい事と、ウェットスーツを着用する事からキックによる浮力の確保はそこまで必要はなく、そのことがキックを重視する必要がない理由です。

でもキックを無視していいわけではない

初心者にとってはキックも重要です。

キックの目的はストロークとのタイミングを合わせ、ローリングによる体のねじれと
うまくバランスをとる事です。
キックの注意点は、上下に大きく動かし過ぎないようにし、水の抵抗を小さく抑えます。

トライアスリートはほとんどの人がローリングとハイエルボーができてない

トップトライアスリートとトップ競泳選手の泳ぎを比較した写真が「トライアスロンJAPAN」という雑誌にありました。

まず、競泳選手の場合、入水時に肘が立っているが、トライアスロン選手の場合、手先より先に肘が落ちてきています。

そしてローリングを見てみると、競泳選手の場合、手の入水時には上体が横を向いているのに対し、トライアスロン選手の場合、手が入水した時はまだ上体は真下を向いています。

なぜローリングが重要か

・体幹の大きな筋肉、広背筋が最大限に使えるようになる

・水の抵抗を少なくする

・ストロークの長さが長くなる

・呼吸動作が楽になる

なぜハイエルボーが重要か

推進力にもっとも影響を与えるキャッチで肘を立てる事によって、とらえる水が多くなり、推進力が上がる

フォームを直すには最低6か月はかかる

まずは、今まで間違って記憶していたフォームを書き直す必要があります。
新しく、脳、神経、筋肉の記憶や動作の回路を構築するのに最低3ヶ月はかかります。

そして、そこから左右のバランスを取ったり、他の技術と組み合わていき、効率的な泳ぎに繋げていくのに最低3か月はかかります。

最低6か月はかけて、泳ぎのフォームを直していくことになります。

ローリングを習得するためのドリル

身体のローリングを行う際のコツは

・頭の頂点から身体の中心を通る回転軸を意識します。
回転軸は上下左右にぶれないようにします。
※串が刺さった焼き鳥をイメージ

・手を入水させるときは、手先を遠くへ伸ばす意識ではなく、脇や体の側面を伸ばす意識をもつ。そうすることで広背筋が効果的に使える。

・右手を入水した時、右肩が右の頬にあたるぐらいを目安に上体を回転させる

習得のためのドリルの種類

サイドキック
肩腕を前に伸ばして真横を向いてキックを行います。このローリングを極端にした姿勢をまずは覚えます。

気を付けキック
両手を太ももにつけ、気を付けの姿勢でキックを行い、呼吸の際に体を左右交互にローリングさせます。

片手プル
片手だけのストロークで泳ぎます。反対の手は太ももにつけ、体をしっかりローリングさせ呼吸を行います。

左右呼吸スイム
3回かくごとに呼吸を行い、両側で呼吸をすることで、左右同じようにローリングが出来るようにします。

両サイド呼吸
右左、右左と連続して両側で呼吸をします。これにより左右同じようにローリングが出来るようにします。
このドリルは先ほどと違い、呼吸の回数は増えることになります。

ハイエルボーを習得するためのドリル

ハイエルボーを行う際のコツ

・しっかりローリングし、入水時、手の位置が遠くにあると肘を立てやすい

・大きなボールを抱え込むイメージ

・肩を顎、頬に近づけると肘が落ちづらい

・入水時、手のひらを外に向けて、親指、人差し指から入水することで
肘がロックされ、落ちづらくなる

習得のためのドリルの種類

スカーリング
これは説明が難しいので動画を紹介します

チキンウイング
肘を曲げ、親指を肩に当てた状態で、肩甲骨から大きく肘を回し泳ぎます。
こちらもイメージしづらいと思いますので、動画を紹介します。

げんこつスイム
手をグーにすることで、ハイエルボーにしないと進まない状況に強制的にするドリルです。

ヘッドアップスイム
頭を水面から出した状態で泳ぎます。(目が水面から出るくらい)
ハイエルボーでしっかり水を捉えないとなかなか進みません。

揃えておきたいトレーニングアイテム

水泳経験があまりないトライアスリートにとって、ランニングや自転車と違って、景色が変わらないプールでの練習はやる気が起こらないこともあるのではないでしょうか?

そんな方たちにおすすめなのが、上記のドリル練習に加えトレーニングにもっといろいろなトレーニングアイテムを取り入れるということです。

そうすることで、普段のトレーニングに変化をもたせることができ、泳ぎの改善や、楽しくトレーニングすることができます。

ビート板

トライアスリートの場合、強くキックをすることは限られていますが、目的は、足首の柔軟性を高めるという事もあります。

また、キック練習は心肺機能を高める効果もありますが、その間に腕を休める事もできるので、より長時間のトレーニングを行う場合にも有効です。

フィン

キックが弱い人におすすめです。
足首の柔軟性を高めることによって、キック力を改善できます。

水泳初心者の方にもおすすめの物でして、このフィンを使う事によって疲労を抑えながら、長時間トレーニングを行う事ができます。

ただ、注意点としては、足で水を蹴る感覚を忘れるといけないので、長時間使い過ぎないようにし、フィンなしのトレーニングを多くすることも重要です。

パドル

目的は2つあります。1つは、正しく手や腕をかきすすめる事によって腕のかき方が改善します。

もう1つは上半身の筋力強化を促進し、かく動作に力強さが増すという事です。

ただ、有名な水泳コーチである「アーネスト・W・マグリスコ」はパドルの使用をすすめていません。

それは肩の腱鞘炎を引き起こす可能性があるからです。肩に痛みを感じた時は、パドルの使用を控えましょう。

プルブイ

腕だけで泳ぐためや、両足を浮かせるために使います。
足が沈みやすい人は、フラットな姿勢を体にお覚えさせるために使用すると良いでしょう。

ただ、トライアスロン界のパイオニアである「デイブ・スコット」は「プルブイが嫌いだ」と言っています。

「自分の浮力に対する感覚が誤った感覚で植え付けられてしまうし、体の回旋を制限してしまう」とのことです。

テンポトレーナー

長距離選手のストローク頻度は、40/分~55/分です。
このストローク頻度に近づける事で、泳ぎの効率も改善されていきます。

ただし、正しいテクニックが身についていることが前提です。

(1回のストロークとは右手が入水してから、再び右手が入水するまでです)

シュノーケル

おすすめなのが、シュノーケル
一般の人が海でプカプカ浮きながら使っているシュノーケルではなくて、ちゃんと水泳のトレーニング用のシュノーケルですね。

久しぶりに前浜ビーチへスイム練習に行くと、泳ぎの姿勢が安定せず、手足のタイミングもバラバラ、波も少しあるので余計にフォームに集中できず。

そんなときによくシュノーケルを使っています。

ずいぶん前にテレビで競泳の池江璃花子選手もシュノーケルを使ってかなりハードそうな練習をしていましたね。

一般の市民プールやスポーツクラブなどでは、このシュノーケルを使えない所も多くあるかもしれませんが、このシュノーケルを使ってのスイム練習はおすすめです。

メリットは呼吸動作や息苦しさから解放られるため、フォームに集中できます。

例えば、フラットな姿勢、腕の動作、手と足のタイミング、キック練習など集中してフォームの改善に取り組むことができます。

呼吸動作が上達しないのでは?と思う方もいるかもしれませんが、基本的な泳ぐ動作が上達、安定してくれば、呼吸動作も楽にできるようになります。

あと、このシュノーケルを使用する際は、一緒に鼻栓、鼻クリップも購入することをお勧めします。

水中で口から息を吸う際、鼻からも一緒に吸い込んでしまい、水が入ってきます。慣れてる人は鼻栓無しでもシュノーケルを使えるのかもしれませんが、僕は出来ないので、鼻栓を使用しています。

確か、池江璃花子選手は鼻栓を使っていなかったかと思います。

トライアスリートにとってスイムの問題点は、有酸素能力ではなく水泳の技術の低さです。

シュノーケルの使用により、いちいち呼吸のために動作が乱れることがなくなれば、動作の修正に集中することができ、ポジションや手足の協調の改善を効率よくできます。

先ほども言いましたが正しいポジションと、手足の動きの協調がうまくできていれば、息継ぎのテクニックを組み合わせることは、そんなに難しくはありません

スイム初心者の方もぜひ使うべきアイテムだと思っています。スイムが楽しくなります。
まずは楽しみながらスイム練習をしてみてはいかがですか?

水泳の練習は自転車やランニングと違って、いろいろなトレーニング用具を使ってトレーニングができます。

トレーニングに対する意欲を高め、楽しみながらやってくために、いろいろと取り入れてみましょう。

正しい方法で練習できているか?

最後は水泳初心者や水泳が苦手なトライアスリートにとって大事なことです。

筑波大名誉教授、野村武男さんは「正しい方法の第一条件は、必ずだれかほかの人にみてもらうことだ」と言っています。

自分が正しく泳げているのか、練習できているのか、良くなっているのか、という判断を自分ですることは、かなりレベルの高い競泳選手でも難しい事です。

フィードバックの重要性

フィードバックとは「結果を原因に反映させて改善すること」という意味。
簡単に説明すると「原因を探し、修正すること」

ダグ・レモフ著の「成功する練習の法則」では次のようにあります。

「成功に結びつく最良の方法は、計画のなかにフィードバックを規則正しく組み込むことだ」

練習の流れは

①練習
②フィードバック
③フィードバックを使って再度練習
④何度かやり直す
⑤考える

やはり、水泳のことをよくわかっている人に定期的にみてもらうことが重要です。

まとめ

トライアスリートにとってクロールの上達で重要な技術は

ローリング
ハイエルボー

そして、これらの技術を習得する上で前提となることは

正しい方法で練習する

これらのことを意識して、日々練習に取り組んでいきましょう。

そして、トレーニングを継続していくために

いろいろなトレーニングアイテムを使って楽しむ

この記事が、水泳が苦手なトライアスリートの上達するためのヒントとなれば幸いです。